【スイス】江藤先生の出張報告

教員ブログ 2015年5月30日 postedkimura 【スイス】江藤先生の出張報告 はコメントを受け付けていません

デサント 戸井田欧州代表

 

デサントは、最近スイスのローザンヌ市に事務所を開設した。ローザンヌ市はオリンピックを仕切るIOCが本部を置く町だ。

 

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戸井田氏へのインタビューは、戸井田氏が出張に旅立つ前の時間を頂き、ジュネーブ空港の喫茶店で行った。

 

デサントは、自社の世界ブランド(DESCENT)、国内ブランド(SHISEIST)の他、多数の海外ブランドを買収または提携して日本および世界で販売している。もともと海外ブランドはライセンスによる国内販売が中心であったが、いくつかの有名ブランドを日本国内で育て上げると、そのブランドがライセンスをやめ直販方式に変更されてしまうという憂き目に会った。このような事態を回避するため、ブランド買取方式を考案し、現在areneやle coq sportifなど6ブランドを買い取ってアジア地区または日本限定の自社ブランドとしている。 現在、デサントの海外展開を進めており、欧州本社の設立検討のために赴任している。

 

スポーツウェアの世界は、Function with Fashionの視点での製品開発を行う。これに対しユニクロなどの製品はFashion with Functionの視点だ。この差は大きく、開発スタイルも異なる。

デサントでは、繊維メーカーに機能を提案し、研究開発費を出し、出来上がった製品の独占販売権を得る形で新製品を開発する。開発のタームは2年ごとだ。これは、2年ごとに夏と冬のオリンピックが開かれるためだ。常に、次のオリンピックを考えて製品開発を行っている。

ある程度の独占販売期間が過ぎると、材料メーカーは、その製品をユニクロなどに販売する。これは大量に売れるため、利益が出る。材料メーカーは、その利益まで考慮したうえで、機能性繊維の研究開発を請け負っている。スポーツウェアの市場だけでは小さすぎて、材料メーカーの独自技術開発は期待できない。

このような積極的な自社主導の製品開発を行っているのは、日本ではデサントともう一社だけで、他の多くのスポーツウェアメーカーは、材料メーカーの開発に依存している。しかし、スポーツの世界は人的なつながりや既得権(各競技毎の団体の存在など)が多く、市場開拓は容易ではない。

世界の国々をその得意分野で見ると、下の図のようになる。

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日本は機能的な技術開発が得意だが、デザイン・ファッションでは弱い。

この構造を欧州の中に当てはめてみると、下のようになる。

世界における日本に当たるのが、スイスとオーストリアだ。スイスは欧州の中では、デザインよりも機能を重視した製品を作る傾向があり、日本との親和性が高い。

このような環境から、スイスとは古い付き合いだ。

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もともとスイスにはスキーウェアでラッセチュース、アウトドアウェアでマムート(Mammut)という我々のライバル企業があり、ここの製品と競合することが多かった。

デサントは、1948年にスイスで初の冬季オリンピックが開催された頃からスイスで、スイス・チューリッヒ大学の教授であった流体力学の専門家ハンネス・ケラー博士、ハンスヘス博士と、1970年から共同開発を開始し、スポーツウェアに流体力学を取り入れた。これがスイスとの関係の始まりだ。デサントは1972年の札幌オリンピックで、新しいデザインへの挑戦も行っている。

現在では、オリンピック委員会がスイス・ローザンヌに本部を置くこともあり、スイスとの関係は益々重要となっている。

 

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