【出張報告】クリエイティブ産業のための知識交流拠点

教員ブログ 2017年5月27日 postedkimura 【出張報告】クリエイティブ産業のための知識交流拠点 はコメントを受け付けていません。

今日は、2012年からはじまった、クリエイティブ産業のための知識交流拠点について書きます。

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【写真】マンチェスターPeople’s Museumの展示

クリエイティブ産業とは、ブレア政権期に示されたCreative Britainというビジョンに基づいて選ばれた「個人の創造性、技能、才能を源泉とする、知的財産の生成や活用を通じて富や雇用を創出する潜在力を持っている」産業です。すでに、世界各国でクリエイティブ産業という言葉が使われていますが、英国の場合は、統計がまだほとんど整備されていない、統計的なカテゴリーでは説明しきれない、しかし、たしかに経済効果を創出している人や組織の総称を意味しています。自然資源や製造技術よりも、人の能力やスキルが問われるお仕事全般を指しますが経済効果も見せなければならない」ので、映画や音楽など具体的な産業で数値を示しています。しかし、例えば、この言葉が使われ始めた1998年の時点では選ばれていたのに、今は含まれなくなった産業もありますし、博物館・美術館・図書館など、新たにクリエイティブ産業に選ばれるようになった産業もあります。数値で説明するときに生じてしまう誤解を解決するため、最近は、クリエイティブ産業とクリエイティブエコノミーという二つの概念を使って、経済効果を発表しています。

クリエイティブ産業の知識交流拠点は、芸術人文学研究評議会(AHRC)の事業として、2012年から2016年まで四つの大学に設置されていました。各拠点の主な役割は、他大学(拠点間だけではなく)との連携、産業と大学をつないで新しいビジネスを創出すること、創造性やデザインの重要性が高いビジネスの研究を行うこと、博士課程の学生を中心にプロジェクトベースで教育研究を行うことです。簡単にいうと、ファンディング機能を持った教育研究拠点です。四つの拠点は、イングランドのロンドン大学クイーンメアリー校、ランカスター大学、ウェストオブイングランド大学(ブリストル)、そして、スコットランドのダンディ大学にありました。

四拠点の詳細 http://www.ahrc.ac.uk/innovation/

今回の出張では、4つの拠点のみなさんにお世話になりました。英国ですら、まだイノベーション=STEM(Science, Technology, Engineering, Math)のイメージがつよいため、大変だと言いながら、新しい動きを創り出している使命感で、楽しそうです。とっても刺激的でした。私からすると、こうして、芸術人文学の研究者たちがイノベーション創出に向けた取り組みを行っていること自体が興味深くて、実は、今回だけではなく、2013年から四拠点の方々にはお世話になってきました。今回は、終了後の評価や次なる展開も聞くことができ、とっても勉強になりました。

報告書もでています。(West of England大学の拠点REACTから)

http://www.react-hub.org.uk/publications/publications/connecting-innovate

当然、この動きに対しては、研究のあり方についての様々な意見もあります。ただ、私は、分野によって視点や考え方が違うと、どうしても分析や議論できないことが出てきてしまうので、イノベーションの研究や教育を芸術・人文学の研究者が行う、ということに関心があります。日本とはちがって、分野ごとにファンディングエージェンシーが分かれている、というのもこの拠点事業開始の大きな理由です。

興味深かったのは、芸術人文学は、科学と違い、引用数では研究のインパクトを計ることができないので、その設計を行ってきて、もうすぐ、その基準が発表されるというお話。どんな基準かわからないですが、とても議論が多い話題なので、楽しみです。もう一つ、芸術・人文学にはもちろん他にもいろいろ分野があるのですが、この4拠点でデザイン研究が多い理由は、「政治家がデザインの重要性だけはきちんと理解してるから」、という、、回答(ここでいうデザインの意味についてはこちらこちらのご確認をお願いします)。

四つの拠点でいろいろお話をさせていただいたことをざっくりとまとめると、彼らのいう創造性もデザインも、どの分野や産業でも結びつくことができるので、医療、環境、エンジニアリングといろいろな研究ができる反面、気をつけないと危険な学際研究にしかならないため、ベースとなるディシプリンがしっかりしていることだけでなく、高度なコミュニケーション能力と、他の学問へのリスペクト無しにはできない、かなりハイレベルな取り組みです。

でも、来週書きますが、日本でも似たような動きは、創り出しています。

 

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