【出張報告】ノーザンブリア大学Multidisciplinary Innovation

教員ブログ 2017年5月11日 postedkimura 【出張報告】ノーザンブリア大学Multidisciplinary Innovation はコメントを受け付けていません。

グラスゴーからイングランド北部に移動してきました。この記事では、ニューカッスルのノーザンブリア大学を取り上げます。アップルのジョナサン・アイブさん、デザイン思考で有名なIDEOのティム・ブラウンさんの母校です。

 

northumbriainnovate

写真:ノーザンデザインセンター・ノーザンブリア大学のフロア

 

今回は、multidisciplinary innovationコースのリーダーの先生(もともとプロダクトデザインがご専門)にお話を聞きました。このコースは、ノーザンブリア大学のキャンパスの中ではなく、ノーザンデザインセンターという4,5年前に完成した施設のなかにあります。所有はシティカウンシル、G階と一階(日本でいう一階と二階)をノーザンブリア大学が借り、それ以外は地元の企業などがオフィスを設けています。このプランが出た当時のブレア首相は、競争力を高めるために不可欠な「新しい時代の産業政策」として、1. 中小企業、2. 地域開発、3. 科学、イノベーション、デザインをあげていました(出典:New Britain: My Vision Of A Young Country)ので、まさにその象徴的な建物ともいえます。コースの教室や研究室=スタジオ、カンファレンスルームの見学もさせていただきました。

 

northerndesigncentre

写真:ノーザンデザインセンターの入り口

 

さて、このコース、もともとは、multidisciplinary design  innovationコースというなまえでしたが、英国でもまだデザインということばへの限定的なイメージがあるため、数年前からデザインという言葉を消したそうです(ここで言うデザインの定義については、こちらをご覧ください。)このコースは、2005年のコックスレビューに後押しされた、デザインカウンシル主導の、マルチディシプリナリーなデザイン教育のネットワークの一つです。先日のGSAもこのネットワークにはいっているのですが、調べたところ、30を超える大学がこのネットワークにはいっていて、調べても調べても情報が見つからない大学もいくつかあり、少なくとも、GSAやノーザンブリアのように、学位がとれるコースはあまり例がないようです。ここでは、一年間の修士課程で、学位が取れます。

 

northerndesigncentrefront

写真:ノーザンデザインセンター外観

 

学際的な取り組みが試みられても、うまくいかない例もたくさん聞かれるように、ノーザンブリアでも、はじめは簡単にはいかなかったようです。このコースでは、一年度に20名ほどの学生が在籍するのですが、最初は6、70パーセントがデザイン出身の学生で、ビジネスやエンジニア出身の学生は肩身が狭い思いをしていました。ただ、それはコースの理想的な状態ではなかったため、年々、デザイン出身、ビジネス出身、エンジニアリング出身の学生がおなじ割合に近づくように、バックグラウンドの多様性を保てるように学生を選んでいるとのこと。選べるほど集まるのがすごいのですけど。似たような取り組みは世界各地で見られますが、バックグラウンドをただ多様にするわけでもなく、イノベーショントライアングルと呼ばれる、科学技術、経営経済、デザインで人材をバランスよく集める、これとても大事だと思います。

また、国内国外の学生の割合もいまは7:3ぐらいですが、将来的には5:5にしていくことも目指しているそうです。ノーザンブリア大学は旧ポリテクニック大学なので、もともと産業とのつながりも強いのですが、このコースも、プロジェクトベースで進みます。気になるのは学生の進路、もちろんデザイナーになる人もいますし、多様なのですが、IMPPの関連で興味深かったのが、政府系の機関に就職した人たちの活躍でした。

designininnovation

写真:Innovate UKのパンフレット

政策の立案にも、活かされはじめているようです。Innovate UKとは、2007年7月に設置された技術戦略会議(Technology Strategy Board)の新しい名称です。

 

それともうひとつ、個人的にとても気になっていたことが、アイデンティティ問題です。英国の研究をしてると、アイデンティティの議論は避けては通れないのですが、ノーザンブリアのコースでも、学生たちは、(学部はみなしっかりした専門があるのですが)、自分たちが修士でなにをしたのか、ということを説明するのに苦労するそうです。しかし、ここには、もともと自分は(いわゆる、というよりは、考え方が)マイノリティだというマインドを持った人が集まるそうで、一年を通して、自分ができることは、すべきことはなんなのかを見つけ、多くの学生が自分なりの回答を持っているそうです。

デザイン業界から、政府経由で、このような人材を育てることが求められ、大学がそのような人材を育成し、そして、企業等もそれに賛同して、そういうポジションをつくって採用している、このサイクルがないと、むずかしい気がしました。このようなデザインの機能は、高等教育の細分化や職業の専門化、分業化が進みすぎたために必要になった新たなスキルだと考えられるのですが、ベースとなる専門がない場合はリスクがとても高い方法であるとも思いました。入学前に、しっかり専門を勉強していることが前提ですし、メンバー次第なところもある気がします。もちろん、魅力的ではあるのですが、実現するには、かなりの条件が必要だなあ、と感じてしまいました。

ちなみに、最近、英国では、こういったプログラムを独自に実施するため、工学系大学にたくさんの芸術・人文学の研究者が雇用されているというお話も聞きました。面白い展開だと思います。まだ聞いた話レベルなので追加情報を探していますが、いつかお話を聞いてみたいと思います。

Comment