【スイス】江藤先生の出張報告

教員ブログ 2015年5月22日 postedkimura 【スイス】江藤先生の出張報告 はコメントを受け付けていません。

CIT アンドレアス・ロイター氏

 

Andreas Reuter

Director ad interim, Head of R&D Project Promotion and KTT Suppor

Federal Department of Economic Affairs, Education and Research EAER

Innovation Promotion Agency CTI

 

スライド1

 

CTIも政府機関であり、本拠地はベルンだが、私がスイスに滞在する期間中は、年に一度の組織報告会で、今年はスイス中央部のルツェルンという町で行われていた。この町は、最近中国人観光客が急増し、それに呼応して各時計メーカーの直営店が次々にオープンしている。実際に街中は、中国人と思われるアジア人にあふれていた。

 

スライド2

CTIのNo.2であるロイター氏に面会するため、このルツェルンを訪れ、組織報告会合が終了した後の夕方の休憩時間にインタビューをお願いした。出張先まで追いかけられてインタビューをするとは、さすが日本人とコメントされた。

 

CTIのシステムのうち、特にCTIが資金拠出するテーマの選定と評価方法についてディスカッションした。

CTIはスイスで唯一、民間に研究開発資金を出している公的機関だ。制度の開始は1943年と、第二次世界大戦の終戦直後である。CTIの支出する資金額は、スイス政府全体の研究資金支出から見ると大きくない。スイス科学技術財団の支出する額の三分の一程度だ。

CTIの補助は、大学等の公的機関と、民間企業の共同プロジェクトに対して支出される。この支出に対する申請は、大学から出る場合もあれば、民間から出る場合もある。基本的に必要経費の半分は民間企業側が負担するのが原則だ。

ctiの職員は25人だけである。補助対象の選択は、年度当初から、6週ごとに判定会議を開く。応募されてきた提案は、Engineering Science,Enabling Science, Life Science, Micro- and Nanotechnologies の4つの分野に振り分ける。

判定の専門的見当のため、分野ごとに外部に30人~50人程度の専門家を確保している。これらの専門家は民間企業などの実務家で、通常はその企業のために働いており、週末の時間を使ってCTIの仕事をしてくれる。スイスには、公的機関に協力するために、通常業務を離れてよいという労働システムがある。専門家の人気は4年で、一度更新できるので、最長で8年で入れ替えている。この専門家の発掘が難しい仕事だ。

判定会議にかかるのは、毎回20~30テーマで、専門家のうちの二人が、それぞれの提案の主査読者、副査読者(レフリー)となり、当該提案を判定会議に提案する。その発表を元に、判定会議において決を採り、採否を決定する。

採否の基準は、ビジネスモデルが動くことによりイノベーションが起こるかどうかであり、技術内容の高度さなどは判定材料とはならない。その技術開発が実現することでビジネスが回るかどうかだけを判定する。採択率は50%程度だが、年度末になると予算の関係で判定が厳しくなることが多い。

このようなビジネスを重視しているのは、大学からの提案の多くが技術オリエンテッドになるからだ。大学の研究者は常に研究費を欲しているので、技術内容での審査となると、次々に難しい研究を提案してくるだろう。それを防ぐため、企業との共同研究であることを必須とし、さらに判定基準をビジネスモデルにおいているのだ。

 

採択されたテーマのうち評価の高いものは3年間の補助が与えられる。判定内容によって補助機関や補助内容様々で、もっともレベルの低いものは、イノベーションチェックとして一週間のビジネス調査のみを支援する。CTIに初めてアプローチする企業は、最初はこのイノベーションチェックにアプローチする企業が多く、初応募のうち63%がこれを求める。応募者のうち68%が従業員10人以下の小企業だ。

イノベーションヴァウチャーというシステムは、翌年以降の補助金獲得に向けたフィージビリティスタディを行うものだ。

補助金を獲得したチームは、六ヶ月ごとにマイルストーンが達成できているかどうかの報告会を開催することが義務付けられている。この報告会には、公的機関と民間企業側の両方から必ずメンバーが出席し、CTIの職員および専門家の、前で報告し、指導を受けなくてはならない。

最終的に、補助金がイノベーションを起こしたかどうかのインパクトアナリシスについては、現在でも試行錯誤だ。各国の研究支援機関と協力して、インパクトアナリシスの改善を続けている。基本的に補助金が終了した時点での評価をしている。評価基準は様々なビジネス指標を使っている。売り上げ、利益、コストダウン、期間短縮などだ。

 

このCTIのシステムは、政府のイノベーション支援資金のあり方として、面白い事例だ。

 

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