人口縮小問題のフレーミング
組織学会の途中で,ちょうど同日開催されていた北大の公共政策大学院のシンポジウム(案内PDF)を少しだけ聴いてきました。サマーキャンプのテーマでもあるので若干ご紹介しようと思います。
一言で言うと,「人口縮小社会」という問題はフレーミングがいろいろあるのだな,と理解しました。
人口政策について少子化問題を基準として他の問題提起の在り方との対立関係を考えてみましょう。考えた限り少子化問題に対抗する論点は全部で3つぐらいあって,ひとつは女性の社会進出,あるいは女性の自由な生き方という人権問題との対抗関係がある。少子化を女性の問題に帰着させずに,社会全体として考えなければならない,という但し書き付きの少子化問題であり,それほど対抗関係は強くないかと思います。
もう一つは少子化の傾向は所与として,移民によって労働力を解決しようとする論点です。子を産み育てるという若年層の生き方の問題というよりも労働人口の問題として考えるフレーミングです。介護等の労働が不足していることを考えれば,世代間での優先事項の対立になりうるフレーミングであるとも考えられます。もちろん少子化対策がなされることに反対こそないとは思いますが,少子化問題およびその対策が相対的に重要度を減じる取り組みではあるので,対抗度は強めでしょう。移民導入と女性の人権問題の方が問題意識としての相性が良く,組み合わせられてしまうとかなり少子化問題としては分が悪くなると考えられます。
このくらいが国家レベルの論点で,これが地方自治体レベルになると一気に論点が変わるという部分がシンポジウムの報告内容でした。人口減少状態においては,地方から人が減っていく,それは少子高齢化という自然増減の影響と,都会に人が出て行くという社会移動の影響の両方からなっている。むしろ影響が大きいのは社会移動の方で,マスとしての国民全体の人口が減少するからこそ,地方の過疎化が今まで以上に急速に進んでしまう。つまり地方に雇用が足りないから若年者が出て行くんだ,というフレーミングになれば,直接の少子化対策よりも雇用やあるいは地方を便利にする公共事業等々地域間格差や地方対策の対策ならなんでも入る可能性があります。都会に保育所を建てるような即効性のある少子化対策よりも,もう少し因果関係の長い,少子化に結びつくかもしれないし結びつかないかもしれない政策ということになります。
以上は少子化問題を基点にした考え方ですが,もちろん他の問題を基点に考える事もできます。フレーミングは日頃からどのような問題を重視して考えているかによって左右される部分もあれば,フレーミング間のアピール競争によっても左右されます。何を最初のフレーミングとするかによって,どのような多数派を形成できるかが代わり,結果的に重要政策の順位がかわるので,最初の争点をめぐる競争が非常に重要になると考えます。サマーキャンプでいえば最初の問題設定のお題目を決めた時点である程度決まってくる部分が出てくるので,最初の部分のメンバー間の問題意識共有が重要になると考えられます。