北九州スマートコミュニティ学生レポート②

学生ブログ 2015年2月20日 postedkimura 北九州スマートコミュニティ学生レポート② はコメントを受け付けていません

地熱発電・北九州スマートコミュニティ視察に参加して

鈴木 薫

 

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普段あまり目にする事の無い地熱発電施設を真近で見学出来た事は貴重な体験だった。
温泉地が多い日本では、地熱発電は再生可能エネルギーの1つとして、将来の電力不足を補う有効な方法であると思っていたが、実際には、温泉と水蒸気を分離した後、温泉は施設で再利用する他は全て廃棄しており、循環型システムになっていないため、必ずしも再生可能エネルギーとは言えないばかりでは無く、周囲の環境にも影響を与えるリスクがある等課題も多い事が理解出来た。

発電効率が良く、コンパクトで安価に出来るフラッシュ方式の発電施設(見学した発電施設は火力発電施設ベースの設計で過剰に大型化してしまったとの事)は、源泉が高温で噴出する場所で無いと適用が難しい事、源泉が低温で水蒸気が噴出しない殆どの場所では、設備が高価であり発電効率で劣るバイナリ発電方式を使わざるを得ない事、また、どちらの方式でも湯の花が極端に少ない(発電施設のフィルターの目詰まり等が保守上の問題が発生しづらい)場所で無いと利用が難しい事、大規模発電は難しい事等が理解出来た。

発電用の温泉ボーリングには、法規制や地域への影響を配慮した位置決めの制約が細かく決められており、掘削投資が必ずしも成功しないリスク(京葉プラントがボーリングに失敗した現地を視察)もある。また、温泉のボーリングに関しては、地層表層から最新の科学技術を用いた探索調査により、高い精度で成功するものと考えていたが、未だに人の経験と勘に頼るところが大きい事に驚いた。こうした状況を考えると、地熱発電が安定した電力を供給する将来のインフラの一端を担うには厳しい現状があると思えたが、一方で、地熱発電の可能性を信じて、規制緩和や実際の作業認可に向け、管掌官庁との長期に渡る折衝や地域住民の理解を得る為にご苦労された関係者の地道な努力にも、将来に向けた前向きな熱意が感じられた。

 

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 北九州のスマートコミュニティでは、戦前戦後の北九州の公害からの復興に根差した強い環境維持・改善の精神が脈々と受け継がれ、現在の取組みがある事を初めて知り感銘を受けた。
新日鉄住金の巨大工場があると言う立地を生かして、産官学が連携して、水素燃料でコミュニティの電力を自立供給する構想が実現されている事は素晴らしく、関連する施設やサービスに関する先進的な取り組みが、今後全国の広い地域で普及していけばと考える。

ただ、北九州のモデル地域の様に、製鉄所のコークス生成時に付帯的に発生する安価な水素を潤沢に利用出来る地域はそう多くは無く、殆どの地域では直接水素供給を受けられない備蓄型となる可能性が高いので、石化燃料を使ったオンパーパスな水素生成が必要となれば、必ずしもエコであるとは限らないと考える。また、新しい高炉の製鉄方法が、高価なコークスから安価な微粉炭を利用する新しいプロセスに変わりつつある現在、コークス生成時に残差として発生する水素を主原料として利用する現在の北九州スマートコミュニティの方式が、どこまで利用出来るのか心配であった。

最後に、今回の視察機会を提供して頂いた一橋大の諸先生並びに、視察にご協力頂いた温泉地の方々、地熱発電関係者、北九州市及びNPOの方々に感謝致します。

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