吉岡(小林)徹特任講師がフロリダ州オーランドで開催された25th International Association For Management Of Technology Conference(IAMOT 2016)でCross-functional collaboration versus a single functional team in industrial design development: A technology management perspective(邦訳:技術経営の視点から見た、工業デザイン開発における機能組織間連携の効果)というタイトルで研究発表を行いました。
タイトルにあるCross-functional collaboration とは、具体的には、デザイナーと技術者のコラボレーションを指します。また、Single functional teamはデザイナーまたは技術者のみが工業デザイン開発を行うことを意味しています。
昨年3月の一橋ビジネスレビューで特集されたデザインエンジニアリングというコンセプトは、デザイナーと技術者の両方の能力を持つデザインエンジニアと呼ばれる人々をフィーチャーしました。しかし、このような人材の育成の背景には、政策や教育制度が関わってきます。
この研究は、個人ではなく、組織がデザインエンジニアの能力を持つことについての分析だと言えます。
日本の電機メーカーの意匠権のデータを用いて、その意匠が引用された回数の多さでデザインのインパクトをはかることにより、次のことが明らかにされました。
・工業デザイナーにとって、技術者とのコラボレーションは、インパクトのあるデザインを生み出す可能性を高めるが効果は限定的である。また、工業デザイナーが圧倒的多数派でない場合はむしろインパクトのあるデザインが生み出される確率が低下する。
・デザインマネジメントの研究では、カリスマ的リーダーの存在が工業デザインの成功の鍵であることが指摘されてきたが、この分析では工業デザイナーがデザイン開発チーム内で多数派を占めることも成功の鍵となっている。
もちろん、この研究では、一社のデータを用いていること、意匠権の被引用数でインパクトをはかっているため、限界もあります。しかし、デザインと技術のマネジメントの架橋的な分析を試み、それぞれの領域に示唆を与えうる点で、今後の研究の蓄積が期待できます。