【報告】蔵前・如水・理窓スマイリンクセミナーでスイスを語る
江藤学
1月29日、長野県諏訪市で開催された蔵前・如水・理窓スマイリンクセミナーに参加し、「スイスのイノベーション力の秘密」を諏訪の皆さんに紹介してきました。
このセミナーは、東京工業大学同窓会(蔵前工業会)、一橋大学同窓会(如水会)、東京理科大学同窓会(理窓会)が共同で毎年行っているイベントで、今年は一橋大学の如水会が当番校でした。
当日の諏訪は生憎の雨でしたが、諏訪市長はじめ多くの方がお越しになり、議論に参加され、有意義な会になりました。
諏訪は、日本の時計産業の中心地として栄え、昔は「東洋のスイス」と呼ばれることも多かったのですが、時計産業が徐々に海外に移転し、諏訪に時計製造業がなくなったため、最近ではあまりこのフレーズを使わなくなっていたそうです。
しかし、諏訪が東洋のスイスと呼ばれたのは、美しい山と湖、きれいな空気、精密機械産業の発展な色々な背景がありましたし、よく調べてみると、現在の諏訪の製造業を支える精密機械部品、たとえば自動車部品などはスイスでも大きな産業になっています。
さらに、長野県民気質として知られている「真面目で、頑固で、融通が利かない。理屈っぽくて議論好き」な性格は、まさに欧州の中でのスイス人気質と通じるものがあります。諏訪は、東洋のスイス、日本のスイスと言える資質を十分に持っています。
セミナーの冒頭では、諏訪市長の金子ゆかり氏から、昨年12月に政府が策定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を受け、最先端に挑み続ける「ものづくり」で「ひとづくり」を基本として、「輝くSUWA」を創生したいとの話があり、諏訪を「東洋のスイス」として、再度アピールしていきたいというお話がありました。
私からは、スイスのイノベーション力が「ハイレベル」と「ニッチ」に特化した、他で作れないものを作る、という基本姿勢から生まれていることを紹介し、そこにおける人材教育の重要性を指摘しました。聴衆の方々は、「スイスのイノベーション力」というタイトルから、ハイテク技術の紹介があると思われていたようですが、紹介した事例が剪定鋏の会社やエンジンの燃料噴射ノズルの会社だったり、話の多くが技能者教育の話だったりしたので、親近感を持っていただけたようです。
セミナー後の質疑でも、活発な質問があり、回答に窮するような俯瞰的視点からの議論も行われました。会合後は、関係者でさらに議論を深める機会をいただきました。
翌日の諏訪は雪でした。今年もなかなか寒い日が続かず、諏訪湖の御神渡りは出現していないようですが、今年は7年に一度の諏訪大社御柱祭の年で、4月~5月は多くの観光客が訪れるそうです。
確かに諏訪は、仕事さえあれば住んでいたい町の魅力を持っています。東洋のスイスとして、世界の憧れの地となり、高い生産性を実現するポテンシャルを感じました。どのような政策が、この理想を実現できるかを考えることは、IMPPのよいテーマにもなりそうです。