2025年度「イノベーションと経営・経済・政策」④

人材育成拠点 2025年5月28日 postedlijiarong  2025年度「イノベーションと経営・経済・政策」④ はコメントを受け付けていません

2025年5月28日、一橋大学において「イノベーションと経営・経済・政策」の第4回講義が開催されました。本講義は青島矢一教授によって行われ、企業戦略における「選択と集中」および「資源の再配分」という視点から、イノベーション創出の制度的・経済的背景が、理論と実例の両面から深く掘り下げられました。

講義の前半では、前回の講義で時間の都合により十分に説明できなかった「選択と集中」と「資源の再配分」に関する内容が改めて詳しく取り上げられました。青島教授は、企業が持続的な競争優位を確立するためには、すべての事業に均等に資源を配分するのではなく、限られたリソースを特定の戦略領域に集中させる必要があると指摘しました。この過程において重要となるのが「事業の選別と撤退」であり、それは単なる効率化の議論にとどまらず、企業の存在意義や長期的ビジョンを再定義する試みであることが強調されました。

後半では、テーマを「新製品開発」に移し、より現場に近い視点からイノベーション創出のプロセスが取り上げられました。青島教授は、新製品開発が単なる技術革新にとどまらず、組織内の「知の移転」や「越境的な対話」を通じて進化していく動的なプロセスであることを説明しました。製品開発においては、初期段階のアイデア創出よりも、その後のフィードバックの受容と再構築、さらに組織内制度との整合性が成果に大きく影響することが多く、ここでも「選択と集中」や「動的な再編成」の重要性が再確認されました。

また、「新製品開発」をめぐっては、製品ライフサイクルと技術進化の関係性、顧客ニーズの不確実性に対応するための探索戦略、R&Dとマーケティング機能の統合の重要性など、多面的な視点から議論が展開されました。特に、革新的製品の開発における「プロトタイピング」や「試行錯誤」、「ユーザーとのインタラクション」といった実践的要素が、新たな価値創出へとどのようにつながっていくかについて、青島教授ならではの理論的視座と実務的知見が融合した講義内容となりました。さらに、「製品アーキテクチャの概念と産業構造への影響」についても詳細な解説が加えられました。モジュール型とインテグラル型という二つのアーキテクチャの対比を軸に、それぞれがイノベーションのスピード、企業間の協業・競争関係、そしてプラットフォーム形成に与える影響について、国内外の事例を交えながら分かりやすく整理されました。

講義全体を通じて、「イノベーションとは単なる発明ではなく、社会や組織において意味づけられ、価値として受容されるプロセスである」という青島教授の一貫した視点が随所に表れており、受講生にとっては理論と実務をつなぐ刺激的な学びの機会となりました。

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