2025年度「先端科学技術とイノベーション」①
2025年9月17日(水)、秋冬学期の「先端科学技術とイノベーション」第1回の講義が千代田キャンパスの一橋講堂1階特別会議室にて開催されました。本講義は本学の学生に限らず一般の参加者にも公開され、当日はZOOMを通じたオンライン配信も行われました。
今回も昨年に引き続き、カルディオインテリジェンス株式会社の波多野薫氏と、TXP Medical株式会社 戦略推進責任者兼Medical Data Lab所長の大角知也氏をお招きしました。
まず波多野氏からは、「日本におけるSaMD(プログラム医療機器)のスタートアップにおける課題と挑戦」をテーマに、SaMD市場の現状や開発・保険収載に伴う課題、ベンチャーキャピタルの期待するIRRと短期Exitのプレッシャー、国内M&A事例の少なさとIPO戦略の重要性など、スタートアップが直面する経営上のリアルな問題が紹介されました。さらに、長時間心電図AI解析医療機器「SmartRobin」をはじめとする具体的な事例を通じ、臨床試験コストや市場規模の制約を乗り越えながら事業を拡大していく戦略が共有され、受講生は医療機器ビジネスの複雑さとダイナミズムを実感しました。
続いて大角氏は、「医療データの活用とイノベーション」をテーマに講演を行い、リアルワールドデータ(RWD)の種類と特性、Fit for Purposeの考え方、そして製薬企業や医療機関がRWDを用いてどのように意思決定や患者中心の医療を実現しているかを具体的な事例で解説しました。TXP Medicalが提供する「NEXT Stage ER」や臨床研究用Data Warehouseを用いたデータ構造化の仕組み、AIとNLPを活用した非構造データの価値変換、さらにはPRO(Patient Reported Outcome)やePROサービスの最新動向についても紹介されました。データ活用の課題と倫理的配慮、ステークホルダー間のギャップをどう埋めるかといった論点は、学生からも活発な質問を引き出しました。
講義後には質疑応答が行われ、受講生はデータガバナンス、患者ジャーニー分析、生成AIを用いた医療DXの将来像について講師陣と熱心に意見を交わしました。両講師による実践的な知見と最新の業界動向の共有は、学生にとって大変刺激的で、有意義な学びの機会となりました。

