2025年度「先端科学技術とイノベーション」③

授業 2025年10月1日 postedlijiarong 2025年度「先端科学技術とイノベーション」③ はコメントを受け付けていません

2025年10月1日(水)、一橋大学において、株式会社Preferred Networks取締役であり、東京大学上席研究員でもある丸山宏氏を迎え、「生成AI時代のリベラルアーツ」と題する講演会が開催されました。本講演は、情報技術が社会に与える影響を多角的に考察することを目的に、多くの学生・研究者・一般参加者が集まり、熱心な議論が繰り広げられました。

冒頭で丸山氏は、自身の研究経歴を振り返りつつ、自然言語処理や機械翻訳、深層学習など、人工知能の発展がどのように積み重ねられてきたかを紹介しました。AIが「人間の知能をモデル化する試み」であることを強調し、ゲームや数理最適化、統計モデリングなどを例に、人間の知性と機械の知性がいかに異なるアプローチで問題を解決してきたかを解説しました。

続いて、近年急速に普及した大規模言語モデル(LLM)の特徴に触れ、ChatGPTをはじめとする生成AIが「人間のような言語能力」を示しつつも、推論や希少事象への対応に限界があることを具体例とともに指摘しました。特に「ハルシネーション」と呼ばれる誤情報生成の問題や、訓練データ依存による統計的限界を取り上げ、AIを過信することのリスクに注意を促しました。

さらに、講演の中心テーマとして「リベラルアーツの再定義」が語られました。丸山氏は、古代ギリシア以来の自由七科(文法・修辞学・論理学・算術・幾何・天文学・音楽)を引き合いに出し、生成AI時代における教養とは「熟慮に基づく判断を下す力」であると強調しました。AIが高度に発展し、人間の知性を凌駕しつつある今だからこそ、批判的検証を惜しまず、対話を重ね、自由な意思決定を支える教養の重要性が高まっていると述べました。

最後に、生成AIを「抱擁するのか、それとも制御するのか」という二つの選択肢を提示し、人類文明が技術とともに進化してきた歴史を踏まえつつ、今後の社会が直面する倫理的・制度的課題を参加者に問いかけました。本講演は、参加者にとって生成AIと人文学的素養の関係を考える契機となり、今後の研究や学びに大きな刺激を与えるものとなりました。

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