2025年度「先端科学技術とイノベーション」④

授業 2025年10月8日 postedlijiarong 2025年度「先端科学技術とイノベーション」④ はコメントを受け付けていません

2025年10月8日(水)、一橋大学イノベーションマネジメント・政策プログラム(IMPP)の公開講義「先端科学技術とイノベーション」第3回が開催されました。今回の講師には、京都大学成長戦略本部研究員・名古屋大学未来材料・システム研究所特任教授であり、京都大学名誉教授でもある藤田静雄氏をお迎えし、「次々世代半導体を支えるベンチャー企業」というテーマでご講演いただきました。

講義の冒頭では、藤田氏が長年関わってこられた京都大学における産官学連携の発展が紹介されました。2001年の国際融合創造センター(IIC)の設立以降、産官学連携本部や成長戦略本部へと体制が進化し、大学発ベンチャーの創出や共同研究の推進にどのように寄与してきたかを、具体的な事例とともに解説されました。

続いて、世界的な電力需要の増大と再生可能エネルギー拡大の流れの中で、省エネルギーを実現する「パワーデバイス」の重要性が論じられました。シリコン(Si)の性能限界を超える材料として注目される炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)に加え、次々世代半導体として期待される酸化ガリウム(Ga₂O₃)の可能性が詳しく紹介されました。特に、京都大学発ベンチャーFLOSFIA株式会社による「ミストCVD法」を用いた結晶成長技術が、安全性とコスト面で優れ、国内外から高く評価されている点が強調されました。

また、ノベルクリスタルテクノロジーをはじめとする国内企業の動向にも触れ、ベンチャーが産業の変革を担う構造的意義が多面的に論じられました。藤田氏は、半導体産業の技術進化を俯瞰しつつ、研究開発から事業化に至る各段階で大学の知が果たす役割を明確に示し、ディープテック分野における日本の競争力強化の方向性を示唆しました。

本講義は、科学的な精密さと実務的な視座が融合した極めて内容の濃いものであり、藤田氏の長年にわたる研究と実践に裏打ちされた専門的な知見が随所に光りました。基礎から応用、産業化までを有機的に結ぶ本講義は、まさに日本発イノベーションの現場を体感できる貴重な機会となりました。

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