2025年度「先端科学技術とイノベーション」⑥

2025年12月10日(水)、秋冬学期の「先端科学技術とイノベーション」第6回講義が、一橋講堂特別会議室にて開催されました。今回は羽賀史浩先生をお招きし、「持続可能な食料生産とイノベーション」をテーマとした特別講義が行われました。本授業では、琉球大学が中心となって推進する COI-NEXT「農水一体型サステイナブル陸上養殖」プロジェクトを軸に、大学・企業・行政が連携して未来の食のあり方を切り拓く最新動向が紹介されました。
講義ではまず、世界的な人口増加やエネルギー供給の不安定化、漁業就業者の減少といった将来予測に基づく社会課題が提示され、これらが食料システム全体にどのような影響を与えるのか議論が進められました。特に「2030年頃にはタンパク質需要が供給を上回る」という“プロテイン危機”の指摘は、多くの受講生に強い印象を与えました。
続いて紹介されたのは、琉球大学が主導する陸上養殖・アクアポニックスの実証研究です。IoT センサーによる遠隔監視、魚群のインスタンスセグメンテーション技術、Google TV を用いた情報可視化など、先端技術を織り込んだ研究事例は、単なる理論を超えて「現場で動いているイノベーション」として学生の関心を集めました。また、農業と水産業の垣根を超え、循環型の食料生産モデルを構築するというビジョンは、サステイナビリティと事業性の両立を図る新しい産業像として紹介されました。
さらに、万博での展示やスシローとの産学連携による「琉大ミーバイ」商品化など、研究成果が社会実装レベルで可視化されている点も本プロジェクトの特徴です。大学発の研究が実際の食卓につながるプロセスは、学術・産業・社会を横断するイノベーションの好例として学生たちに強い刺激を与えました。当日は、羽賀先生がミーバイを象徴する“魚”デザインの琉球大学特産グッズを参加者全員に配布してくださり、講義内容と深くつながる象徴的なアイテムに多くの学生が喜びの表情を見せました。教室には終始、温かく一体感のある雰囲気が生まれていました。
本講義は、食料問題というグローバル課題に対し、大学が果たし得る研究的・社会的役割を再認識させるものとなりました。学術的洞察と実践的プロジェクトが融合した本授業は、学生一人ひとりに「未来の食のあり方を自分ごととして考える」貴重な機会を提供したと言えます。



















