2025年度「イノベーション研究方法論」①
2025年4月23日、一橋大学イノベーション研究センターにて、青島矢一教授による「イノベーション研究方法論I」の第1回講義が開講されました。本講義は、「社会科学における研究とは何か」を根本から問い直し、現象と理論、仮説と検証、概念と変数といった社会科学研究の基本構造を丁寧に解き明かすものです。
冒頭では、「社会科学が扱う現象の複雑性」について触れられ、自然科学との対比を通じて、社会科学特有の困難と意義が示されました。因果メカニズムの特定には、厳密な仮説構築、測定、解釈の繰り返しが求められること、また、価値や日常経験との距離感が取りにくい点が社会科学の挑戦であると論じられました。
続くセクションでは、演繹と帰納を往還する研究サイクルや、「どうなっているのか」「なぜそうなっているのか」を問う調査設計の違い、さらには「どうすべきか」という問いが持つ罠について、具体例を交えて紹介されました。特に、「なぜ」を繰り返すことによって因果構造を深掘りする手法は、JDIの失敗事例を用いた詳細なブレイクダウンから、多くの受講生の関心を集めました。
講義の後半では、構成概念、操作仮説、因果モデルの基本構造や、妥当性・信頼性に関する議論が展開されました。変数の選択や操作化の工夫、外的妥当性とのトレードオフなど、社会科学研究に不可欠な視点が網羅的に紹介され、受講生たちは熱心にメモを取りながら耳を傾けていました。
社会現象の背景にある構造を「なぜ」の問いから掘り下げ、理論的再構成を目指す思考プロセスの重要性を体感する授業となりました。

